みなさん、こんばんは。
難あり物件コンサルタントの田中です。
富山県への出張を終え、今日は久しぶりの出社でした。
ただし、会社へ向かう前に整形外科へ立ち寄り、骨折している右手を診察。まだ完治には時間がかかりそうです。
出社後にメールを確認すると、2日間で150件を超える連絡が届いていました。
その中に、取引先から送られてきた不動産マーケット資料がありました。内容を確認すると、日頃の売買・賃貸実務で感じていた市場の変化が、数字にも表れ始めていました。
今回は2026年の不動産市場について、実務上重要な3つのポイントに整理します。
1.中古マンションは売り出し価格と成約価格の乖離に注意
首都圏の中古マンション成約単価は、2か月連続で前年同月を下回りました。
三菱地所リアルエステートサービスの資料でも、首都圏中古マンションの新規登録単価と成約単価が下落に転じ、売主の売り出し希望価格に買主の予算が追いついていない可能性が示されています。
査定実務で注意すべきなのは、成約事例だけを見て売り出し価格を決めないことです。
市場の転換期では、過去3~6か月の成約価格より、現在売り出されている競合物件の状況が重要になります。
具体的には、次の項目を確認します。
* 同一マンション・周辺マンションの販売戸数
* 売り出しからの経過日数
* 当初価格からの値下げ幅
* 内見数と申込み状況
* 管理費・修繕積立金
* 大規模修繕や一時金徴収の予定
* 住宅ローン金利上昇による返済額への影響
特に注意したいのが、媒介契約を獲得するための高額査定です。
査定価格は、不動産会社が買い取る金額ではありません。売れる根拠がなければ、販売期間が長期化し、何度も価格を下げることになります。
中古マンションの売却では、査定額の高さよりも、「誰が、どのような資金計画で購入できるか」まで説明できる不動産会社を選ぶ必要があります。
2.戸建て市場は堅調でも、物件ごとの法的調査が不可欠
首都圏の中古戸建て、新築戸建てについては、成約件数と価格が前年を上回り、在庫も減少傾向にあります。
マンション価格の高騰により、購入希望者が郊外の戸建てへ移動している可能性があります。
ただし、戸建てはマンション以上に個別性の強い不動産です。
査定前には、少なくとも次の調査が必要です。
* 建築基準法上の道路種別
* 接道間口と道路幅員
* セットバックの有無
* 再建築の可否
* 私道の所有関係
* 通行・掘削承諾の有無
* 市街化区域・市街化調整区域の別
* 用途地域、建ぺい率、容積率
* 土砂災害警戒区域などの災害リスク
* 建築確認、検査済証、増改築履歴
* 境界標と確定測量の有無
特に再建築不可や私道問題のある戸建ては、一般的な住宅ローンが使いにくく、買主が限定されます。
だからこそ、通常の戸建て相場から単純に査定することはできません。
一方で、建物が建てられない土地でも、隣地所有者、資材置場を探している事業者、倉庫用地を求める人、家庭菜園目的の人などには需要がある可能性があります。
当社でも、大手不動産会社から売却困難と言われた横浜市戸塚区の接道義務を満たさない土地について、問題点を明示して販売し、倉庫用地として購入する買主様を見つけました。
市場が堅調かどうかだけではなく、その不動産の利用方法から買主像を考えることが重要です。
3.家賃上昇と賃貸経営の収益改善は別問題
主要都市の賃貸市場では、賃料上昇と在庫減少が続いています。
三菱地所リアルエステートサービスの調査では、2026年3月末時点における都心5区の平均募集賃料は1坪当たり1万6,648円、空室率は6.66%、平均募集期間は3.06か月でした。
分譲マンション価格の高騰や出社回帰による職住近接需要が、都心賃貸市場を支えていると考えられます。
ただし、賃料の上昇がそのまま賃貸経営の収益改善につながるとは限りません。
貸主側では、次のコストも上昇しています。
* 建物修繕費
* 設備交換費
* 管理委託費
* 清掃費
* 火災保険料
* 固定資産税
* 原状回復費
* 残置物処分費
普通借家契約では、工事費が上昇したからといって、直ちに既存入居者の賃料へ転嫁できるわけではありません。
また、都市部と地方では賃貸需要に大きな差があります。
今回、富山県で調査した物件について地元業者へヒアリングしたところ、「家賃1万円でも入居者の確保は難しい」との見解でした。
地方の古い共同住宅では、表面利回りだけでなく、実質収支を確認しなければなりません。
実務上は、次の式で考える必要があります。
年間家賃収入-空室損失-管理費-修繕費-税金・保険料=実質的な収益
さらに、10年以内に必要となる屋根、外壁、給排水管、給湯器などの大規模修繕も見込む必要があります。
相続したアパートや空き家は、現時点で家賃が入っていても、将来的な修繕費や売却可能性を考慮すると、早期売却が合理的な場合もあります。
《全国一律の不動産相場は存在しない》
2026年の不動産市場は、一つの言葉では説明できません。
中古マンションには価格上昇の鈍化が見られ、戸建て市場は比較的堅調。都市部の賃貸住宅では家賃が上昇する一方、地方では低家賃でも借主が見つからない物件があります。
さらに、同じ地域でも、接道、法令制限、建物状態、管理状況によって市場性は大きく変わります。
売却や保有継続を判断するときは、
1. 現在の売却価格
2. 年間の実質収支
3. 今後必要になる修繕費
4. 将来の賃貸需要
5. 相続後の管理負担
6. 最終的な出口戦略
この6点を確認する必要があります。
「不動産価格が上がっているから持ち続ける」「家賃が入っているから資産である」と一面的に判断するのは危険です。
所有している不動産が、今後も収益を生む資産なのか。それとも、将来多額の費用が必要になる不動産なのか。
市場全体のニュースではなく、個々の物件を調査して判断することが重要です。
夜は大学不動産連盟の情報交換会に参加しました。
難しい不動産ほど、一社だけでは解決できません。地元業者、司法書士、土地家屋調査士、弁護士、行政などとの連携が、出口戦略をつくるうえで大きな力になります。
本当は懇親会にも参加したかったのですが、右手骨折中のため断念。
たかが手の骨折、されど手の骨折です。
不動産も「少し道路が狭い」「少し古い」「少し荷物が残っている」という小さな問題が、売却時には大きな障害になることがあります。
問題が複雑になる前に調査を始めることが、売却や実家処分を成功させる第一歩だと思います。(^^)





