■ 売却が進まない時、値下げの前に整理したいこと
おはようございます。
再建築不可物件コンサルタントの田中です。
不動産の売却が進まない時、価格の見直しは重要な選択肢です。しかし、購入後の用途や必要な費用が分からない物件では、価格を下げても買主が判断できないことがあります。
今回は、千代田区のマンション転売制限のニュースと、2026年10月の宮崎県・奈良県出張を通じて、売却が難しい不動産をどう調査し、販売条件を整理するかを考えます。
■ 転売規制は「対象」「時期」「市場への影響」を分けて読む
千代田区が2025年7月18日に不動産協会へ行った要請は、一定の再開発等事業で販売するマンションに、引渡しから原則5年間の転売制限を特約として付けることなどを求めたものです。
対象は、総合設計などの都市開発諸制度を活用する事業や市街地再開発事業のうち、これから許認可等を受ける事業とされています。区内の全マンションへの一律の売却禁止とは区別する必要があります。
短期転売を抑え、居住目的の購入者に住宅が届くようにする意義はあります。一方、私は、取引が鈍化する局面で購入への制約が重なれば、停滞を強める可能性を懸念しています。
住宅新報が報じた東日本レインズの2026年9月集計では、首都圏中古マンションの在庫は前年同月比15.1%増、成約件数は同22.7%減でした。
ただし、この数字だけで金利や政策との因果関係は説明できません。また、首都圏中古マンションと地方の空き家・土地は別の市場です。
政策への懸念は見解として持ちながら、個別物件の売却判断には、その地域と条件に合う成約事例、競合物件、問い合わせ内容を使う必要があります。
■ 日南市で感じた、物件の条件と地域の需要を分ける必要性
宮崎県日南市では、現地調査とお客様のご案内後に市内を移動し、「売り家」「売り地」の看板や空き地が目につきました。
現地でお話ししたお隣の方からは、若い人の少なさや働く場所についての懸念も伺いました。
看板の数や一人の方のお話だけで、地域全体の需給や雇用状況は判断できません。しかし、居住用として販売するなら、建物の状態だけでなく、生活や仕事の見通しも購入判断に関わるという視点は欠かせません。
例えば、問い合わせがあっても購入に進まない場合、価格が理由なのか、修繕費なのか、交通なのか、希望用途との不一致なのかで、対応は変わります。
「地方だから売れない」とまとめず、検討が止まった理由を確認することが大切です。
■ 吉野町の荒地調査――買主が知りたいのは、使い始めるまでの条件

奈良県吉野町では、市街化調整区域の荒地を調査しました。市街化調整区域とは、開発や建築を抑える区域です。
町役場の本庁舎、飯貝庁舎、香束庁舎、吉野土木事務所、中和土木事務所などを訪問し、条件を確認しました。
今回把握した課題には、次の点があります。
・水道・下水道・ガスがない
・前面道路に電線・電柱がない
・埋蔵文化財包蔵地に該当する
埋蔵文化財包蔵地とは、地中に遺跡などの文化財が存在することが知られている土地です。
これらの条件から直ちに「何にも使えない」と結論づけることはできません。一方、「安いので買ってから考えればよい」と案内できるものでもありません。
次に検討するのは、希望用途での利用可否、必要な確認や手続き、設備整備の実現性と費用です。
今回の調査は、課題を把握した段階です。活用方法の確定や成約に至った事例ではありません。この進行状況も、確認済みの事項と一緒に明確に伝える必要があります。
■ 野迫川村での気づき――距離の表示を、生活に使える情報へ
野迫川村では、地域を巡る途中でバス停の時刻表を確認しました。掲示されていた路線は運行日や便数が限られ、往復利用を考える必要がある内容でした。
村営バスなど他の手段も含めた確認は必要ですが、不動産の説明では「バス停まで何分」だけでは足りないと感じました。
通勤、買い物、通院など、想定する暮らしに使えるか。
車の利用を前提とするなら、駐車や道路の条件はどうか。
現地で確認した情報を、買主が自分の生活と照らし合わせられる形にすることが重要です。これは、地方の空き家の販売にも活かせる視点です。
■ 再建築不可物件でも、原因の整理が販売方針につながる
再建築不可とは、現在の条件では建物を建て替えられない状態です。市街化調整区域とは別の問題ですが、物件ごとの制約を調べる必要がある点は共通しています。
売却方針を考える際には、案件に応じて次の順序で整理します。
1.使い方を制約する条件を調べる
道路の種類や敷地との接し方、権利関係、建物・設備の状態などを確認します。
2.買主の総負担を考える
購入代金に加え、諸費用、修繕、残置物撤去、設備整備、維持管理などを検討します。未調査の費用は、見積もり済みのように扱いません。
3.条件に合う利用者を考える
居住や既存建物の利用、隣地との一体利用など、実現可能性を確かめながら対象を絞ります。
4.問い合わせの反応に応じて販売条件を見直す
価格が合わないのか、情報が不足しているのか、用途が合わないのかを分け、必要な対応を考えます。
値下げが適切な場合もあれば、追加調査や関係者との協議を優先すべき場合もあります。費用のかかる解体や改修についても、売却への効果を見極めてから判断したいところです。
■ 相場を待つだけでなく、判断できる材料を整える
千代田区の転売制限は都心の投機的な取引への対応です。一方、地方の空き家や利用制限のある土地では、使い手が購入後の負担を判断できる情報が求められます。
市場が変わっても、個別の問題を調べる仕事の重要性は変わりません。
株式会社リライトは、現地・役所・権利関係などの調査を通じて、売却が難しい原因を整理し、必要に応じて近隣や関係者との話し合いを進めます。
相続した空き家、再建築不可、市街化調整区域の土地などでお困りの方は、お手元の資料と、これまで売却が進まなかった経緯をお聞かせください。
不明な点を明らかにすることが、次の方へつなぐための一歩になります。
株式会社リライト公式サイト
執筆:株式会社リライト 代表取締役 田中裕治
作成日:2026年10月27日
参考資料
千代田区「千代田区内の投機目的でのマンション取引等に関する要請について」(2025年7月18日)
https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/kuse/koho/pressrelease/r7/r707/20250718-2.html
住宅新報「9月の首都圏中古マンション、在庫数5万戸超、過去最多に」
https://www.sjt.co.jp/news/101037
※市場数値は東日本レインズ2026年9月集計を伝える同記事によります。





