横浜市金沢区富岡西2丁目で取り扱った、農地・山林の案件。
今回の土地は、不動産実務の観点から見てもかなり特徴の多い物件でした。
市街化区域内にありながら建築不可。
車両の進入もできない。
水道等の設備引込みもない。
農地部分は耕作されなくなり、山林部分には大木。
さらに土地の地下には京浜急行線が走っていました。
一般的な住宅用地として査定するだけでは、出口を見つけるのが非常に難しい土地です。
■まず確認したのは「本当に建築できないのか」
こうした案件で大切なのは、
「どうせ建てられないだろう」
と最初から決めつけないことです。
現地を確認したうえで役所をまわり、建築の可能性について協議しました。
しかし今回は接道要件を満たす方法を見つけることができず、もともと建物が存在していた土地でもなかったことなどから、最終的には建物を新築できない土地であることが判明しました。
厳密には、「既存建物を建て替えられない」という意味の再建築不可ではなく、今回の場合は「そもそも建築できない土地」です。
この違いも実務では重要です。
■農地は、そのまま買い取ればよいわけではない
所有者様は早期の処分を希望されていましたが、対象地には農地が含まれていました。
そこで農業委員会へ農地法第5条の転用届出を行い、受理された後に当社が購入。
購入後、土地家屋調査士へ依頼して測量を実施しました。
さらに実際に資材置場として利用し、農地部分について地目変更登記を行い、雑種地へ変更。
土地の法律上・登記上の状態を一つずつ整理していきました。
■地下を鉄道が走ることを「マイナスだけ」で考えない
もう一つ特殊だったのが、土地の地下を京浜急行線が走っていたことです。
通常なら、
「地下に鉄道があるから売却しづらい」
と考えてしまいます。
ただ、反対側から考えてみました。
鉄道事業者からすれば、その土地の地下を継続して利用する必要があります。
そこで京浜急行電鉄へ土地の買取りを打診。
土地そのものの買取りには至りませんでしたが、区分地上権を設定したいとの回答をいただき、地上権設定契約を締結しました。
その際、保証金も受領しています。
難しい条件でも、関係者それぞれの立場から考えてみると、別の解決方法が見えることがあります。
■地域の抜け道をどうするか
さらに、土地の一部は近隣住民の方々が駅へ向かう抜け道として利用していました。
所有権が第三者へ移れば、将来的に通行できなくなる可能性があります。
そのため土地の分筆を実施し、自治会長へ、
「通路部分を自治会で引き受けてもらえないか」
と相談しました。
自治会側の意向は、
「通行は今まで通りしたい。ただ、土地を所有する必要はない」
というもの。
そこで最終的には、買主様との売買契約の中で、近隣住民が今後も通路として利用できるよう取り決めることにしました。
不動産取引では所有者と買主だけを見ればよいわけではありません。
長年の地域利用や近隣関係も確認しておかないと、売却後にトラブルとなる可能性があります。
■住宅用地として売らず、「使い方」を売る
問題を整理して販売を開始しましたが、やはり簡単ではありませんでした。
問い合わせがあっても、
「車が入らない」
「水道がない」
などの理由で見送られます。
当然だと思います。
住宅用地として探している方には適していないからです。
ここで大切だったのが、
「何を建てられるか」
ではなく、
「この土地で何ができるか」
へ発想を変えることでした。
そこで家庭菜園やガーデニングなど、土地そのものを楽しむ利用方法を意識して販売。
すると比較的近隣にお住まいの方から、
「昔、畑をやっていたので、ここで野菜や果物を作りたい」
というお話をいただきました。
建物を建てる必要がない。
車で入れなくても構わない。
この土地を「畑」として見てくださった買主様でした。
最終的には2区画まとめてご購入いただき、無事に取引完了。
■取引後の土地を見て思ったこと
その後、近くを通ったため現地へ立ち寄りました。
以前は草木が生い茂っていた土地が、きれいな畑になっていました。

青々とした野菜や果物が育っている。
不動産実務としては、
農地転用、測量、地目変更、地上権設定、分筆、売買契約上の通行条件……
いくつもの論点があった案件です。
ただ、最後に現地を見た時に一番強く感じたのは、法律や登記とは別のことでした。
前所有者様にとっては、将来に不安を感じる土地だった。
買主様にとっては、野菜や果物を育てられる楽しみの場所になった。
近隣住民の方々にとっては、これまで通り駅への近道を使える。
結果的に三者それぞれにメリットを残すことができました。
■売れない土地ほど「誰に売るのか」が重要
再建築不可や建築不可の土地を扱っていると、
「この土地はいくらですか?」
という質問をよくいただきます。
もちろん価格は大切です。
しかし、難しい土地ほど、それ以上に重要なのが、
「誰が何の目的で使うのか」
だと思っています。
住宅を建てたい人には価値が低い土地でも、畑をしたい人には価値がある。
車が入らないことが致命的な人もいれば、徒歩で通える近隣の方なら問題にならない。
不動産の市場性は、土地だけを見ていてもわかりません。
「この土地を必要としている人は誰なのか」
そこまで考えて初めて出口戦略が見えてきます。
そしてこの案件の最後は、私にとっても嬉しいものでした。
「早く手放したい」と思われていた土地が、今では野菜や果物が育つ場所になっています。
誰かにとっての負担だった不動産が、
別の誰かにとっては大切な場所になる。
今回も、そんな「不動産による縁結び」ができました。
難しい不動産でも、問題を分解し、一つずつ整理していけば、思いもよらない出口が見つかることがあります。
土地も人も、最後は良いご縁にたどり着ける。
そんなことを改めて実感した、横浜市金沢区の案件でした。(^^)

